[レポート] Mobility業界のDXを支えるSmartDriveの分析基盤 – Looker: BEACON Japan 2020 #BeaconJapan
Looker社によるロードマップ、顧客事例、パートナー企業によるセッションが堪能出来るデジタルイベント『BEACON Japan 2020』が2020年09月03日から2020年09月24日までの毎週木曜日、計4日間に渡り開催されています。
当エントリでは、その中から2020年09月17日に発表された「Mobility業界のDXを支えるSmartDriveの分析基盤」のレポートをお届けします。
セッション概要
公式ページで紹介されているセッションの概要情報は以下の通りです。
登壇者:
・石川 信太朗氏 - 先進技術事業開発部 Mobility Data Scientist, 株式会社スマートドライブ
発表内容:
モビリティデータの分析を得意とするスマートドライブが、裏側の分析基盤をどのようにつくってきたのか。そもそもデータ分析を行いDXを推進するうえで大切にすべきことは何なのか、Data Analystの知識集約とはどういうことなのか。スマートドライブのリアルな歴史を振り返りながらお話します。
セッションレポート
ここからは、当日に公開されたセッションの内容についてレポートします。
イベントのセッション動画については下記リンクにてアクセス可能です。
会社紹介
「移動の進化を後押しする」をビジョンとして掲げ、モビリティデータの利活用を促進するためのIoTセンサーデータなどの収集、解析、提供までを事業として展開しています。
大きく以下の3つの柱があります。
- データインプット領域:IoTセンサーやジャイロセンサー、GPSや車載カメラなど様々なデータを収集
- データプラットフォーム領域:収集したデータをGoogle BigQueryベースで構築したデータ分析基盤で解析
- データアウトプット領域:法人向けの車両管理システムや車両台数の最適化、テレマティクス保険など様々なシステムと連携
また、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」において、「モビリティセンシングデータプラットフォームの構築とConnected Carサービス特化型AI SaaSの開発事業」にも採択されました。(プレスリリース)
Mobility Data Platform を用いた共創事業開発事例の紹介
モビリティ サービス領域の事業開発は様々な業種・業態との連携が必要で、自社だけで実現するのが困難であるため、競争するのではなく「共創(共に創る)」をコンセプトに様々な企業と事業開発を行っています。
セッションで紹介された事例:
- 小田急電鉄との安心・快適な新しいモビリティ・ライフの実現に向けたプロジェクト
- ロイヤリティマーケティングとのPontaポイントサービスユーザーの移動データを活用した実証実験
- HondaとのEVバイク向けテレマティクスサービス垂直立ち上げ
- 住友商事との従業員向けオンデマンドバスの最適化プロジェクト
- 損保ジャパンとのモビリティ保険・サービス開発のための業務提携
- 出光興産との超小型EVの実証実験
- 丸紅とのEVフリートマネジメントサービス構築に向けた連携
- モノフルとの運航計画からの遅延をリアルタイムで可視化する「着タイム」サービスの共同開発
事例の詳細に関しては、こちらでご確認いただけます。
分析基盤の変遷
今でこそLookerの埋め込み型BI(Embed BI)を利用したデータプラットフォームを構築していますが、事業を立ち上げた当初は膨大なデータを分析し価値に変えるうえでの様々な課題がありました。
- データの存在場所が分散している
- テラバイト級のデータを高速に処理できない
- 正しいデータに正しい権限でだれもがアクセスできる必要がある
- データを意味解釈し分析するData Analystの不足
これらの課題を解決した変遷を以下3つのフェーズに分けて説明します。
Phase 1 の立ち上げ期は、データを扱う会社としては考えられないと思われるかもしれないですが、CSVファイルをダウンロードしてローカルPCで分析していました。
Phase 2 の変化期で、Google BigQueryを利用したDWHを構築し、Tableauを使用したセルフサービス分析を実現しました。BigQueryはクエリパフォーマンスに優れるだけではなく、様々なGIS(空間分析)関数が用意されており、空間ポイント間の距離計算やポリゴンの作成を効率よく行えました。
Tableauは柔軟かつ表現力のある可視化を実現できましたが、200億件のデータをTableau Server側へ抽出するのに半日掛かるなど、BigQueryの高速処理能力を活かすことができませんでした。
また、センサーデータを適切に扱うにはデータの意味とSQLに関する高度な知識が必要となるため、結果的にBigQuery側に解釈不明なSQL文が大量に発行されたり、Tableau側で集計ロジックを実装することでダッシュボードの属人化が発生しました。
Phase 3 の成熟期(現在)では、Embedded AnalyticsとしてLookerを採用してサービス内にLookerを組み込みました。これにより開発工数を削減しつつも、ビジネスサイドからのフィードバックを早期に反映できるリリースサイクルを実現しています。
LookerのLookMLはSQLを抽象化できるため、集計ロジックのブラックボックス化を徹底的に排除し、githubでLookMLのバージョン管理を行うことで開発チーム内でのコーディングルールを統一して属人性を排除することにも成功しています。
クラウド車両管理システム(SmartDrive Fleet)の管理画面にログインすると、SSO認証を利用してシームレスにLookerの組み込みダッシュボードにもログインできるようになっています。
Mobility Data Platformの紹介
モビリティ業界におけるDXの実現のために構築したソリューションです。従来のやり方では開始から実証実験までにデータ収集の方式や加工を行う基盤の構築に1年近く要することもありました。Mobility Data Platformを利用すればサービスを垂直立ち上げすることができ、早ければ2、3か月程度で成果を確認することも可能です。
まとめ
石川さまの講演まとめを引用します。
データの利活用には統合分析基盤とデータの意味解釈を行う専門家が必要。分析未経験のビジネスユーザーにセルフサービスBIを与えるだけでは短期間での成果は見込めない。
データから価値を見出すには、データの収集、分析、利活用のそれぞれのステップで得意領域を持ち寄りながら業界の垣根を越えて共創することが重要。
立ち上げ期から現在まで、データ利活用の様々な課題を解決されてきた石川さまの実感のこもったコメントですね。
特にBIは導入しただけでは自社の課題を解決できないソリューションです。
どういった課題があり、自分たちがBIで何を可視化したいのかを正しく把握することが重要ですし、フェーズに合わせた製品を導入するという判断も時には必要となります。
弊社ではLookerの導入支援に加えて、お客さまのニーズに合わせたデータ分析ソリューションのご提案も可能です。データ分析基盤の構築でお悩みをお持ちでしたら、ぜひともお問い合わせください。